「あれ」
朝、家を出たら、家の前で太陽が待っていた。
「おはよう」
「おはよう」
僕等は挨拶を交わす。
「早いね。そんなに楽しみなの?」
太陽は少し恥ずかしそうに頷いた。
「さすが、変態だね」
そして、股間に手を伸ばす。
「もうがっちがち」
「だって・・・」
太陽が恥ずかしそうにする。普通の朝。青空。そんな明るい日差しの下で、太陽はごく普通のちょっとかっこかわいい奴に見える。だけど、その中身は・・・
「楽しみで、寝られなかった」
少し小さな声で言った。
「だから、早めに迎えに来てたの?」
「うん」
「何時くらいから待ってたの?」
「7時ちょっと前くらい」
僕と太陽の待ち合わせ時間は8時だ。今は8時を少し過ぎている。
「1時間も待ってたんだ」
「うん」
「だったら、裸で待ってれば良かったのに」
「うん」
太陽はズボンの前の膨らみを隠そうともせず、僕と一緒に歩いた。

佐伯さんのマンションのエントランスには8時半に集合の約束をしていた。でも、もうマンションの前に車が停まっていて、運転席から佐伯さんが僕等に声を掛けた。
「早いね」
「太陽が待ちきれないみたいなんです」
「なるほどね」
土曜日の朝、僕等は待ち合わせて、佐伯さんの車で八重樫さんの家にいくという約束をしていた。目的は、SMについて教えてもらうこと。八重樫さんが実際に太陽とSMプレイをするのを見学して、時々教えてもらって僕も参加する、そういう予定だ。
僕は少し緊張していた。太陽とのプレイに僕も参加する。初めての事だ。この前は太陽のお尻の穴の中を触って、腕を突っ込んで、それだけで射精したし、公園で太陽にしゃぶらせて精液を飲ませた。今日はどういうことをするのか、それが僕に出来るのか。これから太陽を僕の奴隷としていくためには大切な日になる筈だ。

太陽はもう自分のことはどうでもいいみたいだ。ただ、僕の奴隷になりたい。そのためならどうなってもいい、男が好きで、男とセックスして、特に僕が好きで、僕の奴隷であることを親や学校の奴等に知られても構わない。そこまで振り切っている。
だからこそ、僕がちゃんと太陽の望みを叶えないと、僕にされたことを含めてみんなに言いふらす可能性だってある。そうなったら、太陽の人生はもちろんだけど、僕の人生も終わってしまう。簡単に言えば、僕は運命を太陽に握られている、ということだ。

車の中でそういうことを考えていた。
「緊張してるのか?」
佐伯さんに聞かれた。
「あ、いえ・・・いろいろ考えちゃって」
佐伯さんにはこれまでの経緯は話してあるし、今日のSMプレイのことも手筈を整えてもらった。
「そうだな。お前にとってもある意味正念場だからな」
後ろの座席でうとうとしている太陽に聞こえないように、小さな声で言われた。
「まだ中学生なのに、大変だな」
(そうなんだよなぁ)
「誰が変態だって?」
後ろの席から太陽が言った。
「起きたか」
と佐伯さん。
「お前以上の変態はいないだろ」
僕はそう答えた。

八重樫さんは貿易会社の社長だ。そのせいか、家はすごく大きい。太陽は来たことがあるらしく、車から降りて、門の横のインターホンのボタンを押す。門が静かに開く。その中に車で入っていく。大きな玄関の前に車が停まる。
「やあ」
八重樫さんが出てきた。
「今日は無理言ってすみません」
佐伯さんが頭を軽く下げた。僕も慌てて下げる。太陽は下げなかった。
「いや、なかなか面白そうだし、こちらも楽しみだ」
八重樫さんが僕を見た。
「諒君だったね。今日はよろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
そして、家の中に入った。

家というより、何かの建物って感じだ。そこに住んでいるっていう雰囲気じゃない。
「あの、ここに住んでるんですか?」
思ったことを聞いてみた。
「まぁ、ここは言わばゲストハウスみたいなものでね」
「簡単に言えば、SM部屋だ」
奧から声がした。
「あ、城戸さん、おはようございます」
あの、昔はやんちゃしていたという城戸さんが出てきた。
「まあ、座りなさい」
リビングのような部屋に入ってそう促された。すぐに飲物が僕と太陽の前に置かれた。
「最初に確認しておくが、まずはSM調教の見学、そして、途中から君もプレイに参加するということでいいんだったよな?」
「はい」
僕はうなずく。
「お前も理解してるんだな?」
八重樫さんが太陽に聞く。
「はい」
八重樫さんは太陽と僕を交互に見た。
「お前は、今日の調教がいつもとは全く違う意味を持っている、ということを理解しているか?」
太陽は少しきょとんとした顔になる。
「まず、今日は諒君の依頼で、諒君にSM調教とはどういうものか、見せるというのが目的の1つ目」
八重樫さんが僕の顔を見た。僕はうなずく。
「そして、諒君がSM調教を理解して、太陽のことを理解して、今後の主従関係を構築するための第一歩にする。これが2つ目」
太陽が僕を見た。
「そして、最後に諒君に実際にプレイに参加してもらう。以上が今日の目的だ」
「諒君・・・」
太陽が僕の名を呼ぶ。
「嬉しい」
太陽が笑顔で僕の手を握る。
「待てよ。お前もいつものなんでもしてほしい、なんでも気持ちいいってプレイじゃだめだぞ」
太陽が八重樫さんを見た。
「お前のご主人様は、ちゃんとお前を調教出来るようになりたいと思ってるんだ。だから、今日、こうして集まってる」
「諒君、ありがとうございます」
太陽が床で僕に頭を下げた。
「だから、いつものプレイとは違って、ちゃんとなにが気持ち良くてなにが辛いのか、お前はどういうことをされたいのか、ご主人様はどういう風にお前を調教したいのか、そしてそれにお前はどう応えるのか、そういったことをちゃんと考えながらプレイするんだ。分かったな?」
「はい」
頭を床に押し付けたまま、太陽が返事した。
(僕も、ちゃんと勉強しないと)
僕等の主従関係の第1歩。それを迎えようとしていた。
「まあ、ごちゃごちゃ話すより、実際にしてみる方が早いだろうし」
佐伯さんが言った。
「そうだな。ただ、ちゃんと諒君に尽くす覚悟はしておくんだ」
「はい」
太陽が大きな声で返事した。

奧は大きな部屋になっていた。天井は梁がむき出しで、鉄のパイプが組まれている場所もある。人を拘束するのに使いそうな手錠や器具、そしてそのための場所のような、木を組み合わせた大きな十字架や、X字のもの、天井の梁から降りてきている鎖、ロープ。入口の向かい側の壁は一面鏡張りになっていて、その他の壁にはいくつもの種類の鞭が引っ掛けられ、いろいろな拷問器具や拘束具、何に使うのか分からないけど電動工具とかも置いてあった。
「調教よろしくお願いします」
太陽の大きな声がした。振り返ると、太陽はもう全裸になっていて、八重樫さんの前で土下座していた。
「聞いてなかったのか」
八重樫さんが溜め息と共に言った。
「今日はお前のご主人様に、SMプレイとはどういうものなのかを見てもらうのが目的だ。命令もなしにいきなり全裸で挨拶するな、馬鹿奴隷が」
太陽が顔を上げて、八重樫さんと僕の顔を交互に見た。
「ほら、ちゃんと服着て、お前のご主人様の命令を待て」
「は、はい」
太陽は慌てて服を着始める。
そして、八重樫さんが僕に言う。
「こいつは俺達に調教されるのに慣れちゃってるから、いきなり全裸で土下座をする習性になってる。君はどうしたい?」
「どうしたいって言われても・・・」
まぁ、どうせ脱がせるんだろうし、いきなり裸でもいいかな、とは思う。でも・・・
「逆に、僕がいいって言うまで脱がせない、とかどうなんですか? 僕の犬なんだし」
トイレで咥えさせた時のことを思い出した。
「諒君にとって、太陽は犬なんだな」
佐伯さんが少し笑った。
「それもいいんじゃないか?」
「犬みたいにご主人様がよしって言うまでお預けな」
二人は僕の考えたことに賛成してくれる。
「じらしプレイだな。服を脱ぐのも、チンポ握るのもオナニーするのも、すべてご主人様によしって言ってもらうまではお預けで」
「そういうのは今までしてこなかったから、いいんじゃないか?」
太陽は服を着終えて僕等の会話を聞いていた。
「よし、じゃ、待て」
太陽はしゃがんで両手を床に突く。
「ちんちん」
手を肩の高さに上げて僕を見た。
「もう調教出来てるじゃないか」
八重樫さんが笑った。
「よし、脱げ」
八重樫さんが言うと、太陽は立ち上がって服を脱ぎ始めた。
「ほら、ご主人様以外の命令聞いたから罰を与えないと」
八重樫さんが僕に小声でささやいた。
(そうか、僕がご主人様なんだから、そうなのか)
僕は服を脱ぎかけている太陽の後ろから、太陽の頭を押さえ付けた。
「お前のご主人様は誰?」
僕が聞く。
「諒君です」
「お前は誰の命令でも聞くの?」
そこで太陽は気が付いたようだ。
「すみません・・・今まで八重樫さん達にしてもらってたから」
立ち上がってまた服を着る。
「これじゃあ、なかなか調教まで進まないなぁ」
八重樫さんが笑う。
「お前は諒君の奴隷だ。もう俺や八重樫さんの奴隷じゃない。それはしっかり理解しておけ」
佐伯さんが言った。だけど、それは僕にとってもそうだ。
(太陽はもう、僕の奴隷なんだ)
まだSMプレイとかしたことないけど、でももう太陽は僕の奴隷になっているんだ。八重樫さん達はあくまでSMプレイのやり方を教えてもらうための先生なんだ。実際にやるのはご主人様である僕なんだ。
それを僕も理解しておかないと・・・・・
「それに、命令に逆らったり、他の人の命令を聞いたら、ちゃんと罰すること」
それは僕に向けての言葉だった。
「どうしたらいいんですか?」
罰すると言われても、何をすればいいのか分からない。
「そうだな・・・例えば頬を平手打ち、鞭打ち、玉を蹴るとか、そんな感じかな」
「ケースバイケースだね」
二人が教えてくれる。
「やっぱり痛いようなことがいいんですね?」
「その方が早く躾けられるとは思うけど、そこはご主人様が判断してやればいいだろう」
僕は太陽の前にしゃがむ。そして、頬を平手で叩いた。パチンと音がした。
「それじゃあ弱すぎるだろ」
ちょっと自分でもそう思った。だけど、やっぱり人の顔を叩くのは少し躊躇する。
「奴隷は奴隷、友達じゃない。割り切って思いっきりぶっ叩け」
いつのまにか城戸さんが加わっていた。
「はい」
僕は手を振り上げた。さっきはこの後躊躇した。今度は、思いっきり頬を打った。

誰かを殴ったなんて正直初めてだった。僕の手が少し痛む。
「そうだな。最初に殴り慣れとくのもいいかもね」
「きちんと主従関係を体に染みこませるのにも役立つだろうよ」
佐伯さんと城戸さんが言う。
「何度か殴ってあげて。その方が自分の立場、よく分かるだろう。
もう一度手を振り上げる。思いっきり頬を打つ。さらに3回それを続けた。



太陽が僕の足下で正座している。顔は僕を見上げている。その頬が少し腫れている。
「じゃあ諒君、命令して」
八重樫さんに言われた。
「はい」
これが、ご主人様としての最初の命令だ。
「全部脱いで裸になって」
すると、城戸さんが言った。
「ご主人様らしくないな。『脱げ』でいいだろ。それくらい、お前も心得てるよな」
太陽がうなずいた。
「そ、そうなんですか。じゃ・・・」
改めて太陽を見る。太陽は僕を見つめている。
「脱げ」
僕が命じると同時に、太陽が服を脱ぎ始めた。
「そうだな、ご主人様に脱げと言われたら、いつでもどこでも基本全裸だよな」
(そういうものなの?)
少し驚きながら、でもそれが顔に出ないようにした。
(ってことは、例えば教室なんかでズボンだけ脱がせたいときは、ズボンを脱げって言うって感じかな)
などと考えている間に既に太陽は全裸になって僕を見ている。もちろん、ちんこは勃起していた。
「じゃ、次は」
八重樫さんが縄を手に持っていた。それを僕に見せる。
「ここに立って」
僕は八重樫さんと僕の間の床を指差した。


      


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